何者

朝井リョウ作の『何者』が今年実写化されるそうで。ダーマサ(岡田将生)とダーマサ(菅田将暉)とダータカ(山田孝之)の共演ということでこれは観に行かねばなるめえと思い、とりあえず小説読みました。以下感想、多分ネタバレはない。




 いやこれすげ〜〜〜〜我々世代に向けられた小説だよ!直木賞受賞作品らしいですが、これ私たちの世代(93〜00年生まれくらい?)以外の人たちはピンときてんのか?って感じちゃうほど、「今時」な小説だと思った。SNSを利用してる就活生の物語なんだけど、単にSNSめんどくせ〜就活つれ〜 ってだけでなく、その二つが組み合わさったときに人間の本性がいかに剥き出しになるか、をリアルに緻密に描いた作品だと感じてます。
 そもそも、なんでみんなSNSやるんだろうね。なんでツイッターとかインスタグラムに友だちと遊んだ写真とか、デザートの写真載せたがるんだろうね。考え始めると人間の不思議にぶち当たるんだけど、主人公がこの疑問に対して出した「他人に自分を想像してほしいから」という答えにはなるほどな〜と唸りました。想像、確かに。自分が楽しかったことをただ記録に残したいだけなら、写真とりーの日記つけーのすればいい話だけど、わざわざSNSにアップして公開するっていうのは楽しそうな幸せそうな自分を相手に想像してほしいからなんですかね。この小説面白いのが、人物紹介がツイッターの自己紹介の欄になってるとこなんだよね。「◯◯大学 経済学部3年 軽音学部 BUMP/ONE OK ROCK...」 とか 「◯◯大学 文学部3年 ボランテイアサークル部長 留学経験アリ 北欧とカフェ巡りが好きです♪」みたいな。インパクトデカ!思って笑ったけど、でも確かにツイッターの自己紹介欄見るだけでその人がどういう人なのか、大雑把な像は把握できるな〜と驚いた。そういう時代であり、自分もそういう人間なんですね。これも他人に想像力を求めてるよね。自分はこれこれこういう人間です、っていうのを肩書きなり趣味なりで表現して、相手に自分の人間像を想像させてる。
 他人に想像させた自分と自分の実態が合致してる場合はいいとして(よくないかもしれんけど置いときます)、問題はそこにギャップが生じてる人の場合だよね。私これ結構思うんだよね〜、なんかね。例えば、飲み会が終わった後にツイッターみると割とみんな「今日の◯◯会楽しかった😍次も楽しみ❤️」みたいなツイートしてるじゃないですか。でも中には「お前絶対楽しんでなかったやろ?!」みたいな人もそういうツイートしてるんだよ。これって確認行為というか、本当は大して楽しくもなかったことを楽しかったってアピールすることでむりやり「楽しかった」ことへと昇華してるんでない?と思う。余計なお世話じゃ!と思うかもしれないけど、こういうことはちょくちょくあって、その都度になんか違和感を覚える。就活になるとその現実と想像のギャップみたいのが爆発する、っていうのが『何者』の見どころというか、大きなテーマだと私は捉えてます。いわゆる「意識高い系」もそのひとつで、「OB訪問してきた!実際に勤めてる方から話を伺って満足♪」みたいなツイートする一方でホントは何も実になってない、みたいな。実際の自分は何も前に進んでないけど、頑張ってる風なツイートして周りに充実してる自分を想像させてとりあえずお茶を濁す。この構造が、就活の面接に似てるんでしょうね、多分。本当は大したことない人間なんだけど、企業が欲しがる人間であるために、自分を立派な人間だと企業に想像させる必要がある。でも、意識高い系のツイートにせよ就活の面接にせよ、本当は中身が伴ってなくて薄っぺらであることは周囲にはバレバレ、的な。SNSや就活に疲弊しちゃう原因はほんとの自分を偽って大きく見せないといけない辛さにあるんだろうなと思いました。
 SNSやら就活やらやたらと連呼してるしその二つが『何者』の主題であることは確かなんだけど、その奥に「頑張るって何?」っていう漠然とした、でも大きな提起も感じた。頑張ることをアピールしないで頑張れる人って、意外と少ないんじゃないか?という話。なんというか、人目のある場所じゃないと勉強のやる気がでないとか(お恥ずかしながら私これでした)、そういう他人からの「あいつは頑張ってる」的な評価を貰わずに頑張れる人、あんまりいないんじゃないかと思うんですよ。だからみんな今日は何km走ったとか、何時間勉強したとか、何kg痩せたとか、そういうことをわざわざSNSに書くわけでしょ。他人の目を関係なく頑張るって難しいことだよ、ということをSNSが浮き彫りにしてる、そういうテーマも含んでたように感じます。

 全体の感想としては、結構面白かった!ひとつひとつの描写にリアリティがある。特に、同じ空間にいるのに別の端末からツイッターを見てるときの居心地の悪さとか、そういうさりげない気づきが自然に文の中に組み込まれててスゴイと思った。何と言ってもね〜〜〜〜〜結末は驚いたよ!途中まで青春小説だと思ってたら実は推理小説だったよ、ぐらいのビックリ。ああいうトリック?テクニック?は何か名称がついてそうだけど、知ってる人いたら教えてください。素晴らしいオチだった!(これネタバレですか?)
映画は10月公開らしいけど、私は今から二階堂ふみが楽しみです。こりゃ確かに、二階堂ふみしかいない!って感じの配役だと思う、小説読んだ感じだとね。広瀬すずでも小松菜奈でも土屋太鳳でも橋本愛でもダメ。教養があって、それをひけらかしてる、それが様になってる若手女優は二階堂しかおらんのではないか?!と思います。若手女優事情あんま知らんけど。興奮してきた〜!ということで寝ます。読んでくれてありがとう。おやすみ。